小3:三角形

小学校3年:「三角形」

1 なぜ三角形ができないときがあるのだろう(1時間目)
図1 4種類の長さの棒 

小学3年生「三角形」の実践で、図1の教具を用いて、子どもたちが楽しそうに三角形をつくっている。「三角形」というこの単元では、三角形を構成する要素である辺の長さに着目して、正三角形や二等辺三角形などについて学んでいく。同じ色を選んで4種類の正三角形(まだ正三角形という用語は知らないが)をつくって喜んでいる子どもたちや、いろいろな色の棒を組み合わせてつくった自分だけの三角形を得意げに見せ合う子どもたちの姿が、教室のあちこちで見られる。そのような中、4種類の長さから任意に3つの棒を選んだ場合、三角形がつくれないことがある。子どもたちは、三角形ができない①~③の場合があることに気がついた。括弧の数は3辺のそれぞれの長さである。

①:オレンジ、青、オレンジ…(5,12,5)

②:オレンジ、黄、オレンジ…(5,10,5)

③:オレンジ、青、紫   …(5,12,7) 

そこで、次の時間では、なぜ三角形ができない場合があるのかを話し合う活動を通して、すべての子どもが辺の長さと関係に着目して三角形の成立条件を理解できるようにしたいと考えた。

2 どうして三角形ができないのだろう(2時間目)

2時間に教師は、子どもたちが見つけた「三角形ができない3つの場合」を黒板に示して「どうしてこの3つはできないのかな」と、問いかけた。一部の子どもは「辺が短い」と答えたり、ざわざわしたりしている。この段階での多くの子どもたちは、三角形ができない場合がありそうだと考えはしているものの、三角形の成立条件について明確に考えをもっている子どもはいないようであった。そこで教師と学級全体の子どもたちで「3つの辺の長さがどんなときに三角形ができるのだろう」という学習課題を設定した。

この授業では、子どもたちが教具に触れて操作しながら対話を行えるようにし、操作と対話を通して自分の考えをもつとともに、考えを深められることを大切にした。そして、本時のグループ交流での対話は3回行った。

それでは、ある4人組(A子、B子、C男、D男)のグループ交流の様子を見ていこう。特に、グループ交流を通してA子がどのように考えをもち、深く考えていったのかに注目したい。

1回目のグループ交流の対話では、③をつくってみたいと言うC男と、「分からない」と言いつつ①をつくってみたいと言うD男、2人の様子からA子は②をつくろうとする。

D男:これ①できないんじゃない、これ?

A子:できるよ。

D男:これ②はできるけど、①のオレンジができるかどうかって。

C男:これ③曲がる。

A子:え、ちがうよ。

C男:③できたけど、曲がった。先生、③曲がってしまうよ。

A子:これ②だったらちょうどだよ。

教師:だから?できる?できない?

C男:できない。

教師:ということを班の人たちはみんなわかってくれた?

A子:できない。

教師:みんな今のことは納得できた?ちょっとわからないようだったら、もう一度話してもらう?

C男:えっとこれ③は、こうやってつくるとこうやって曲がります。えっとこれ③はつけても、12cmの棒が曲がってしまいます。だからできません。

D男:あーそれ①できません。オレンジのすみとすみが離れているからです。

A子:私はねえ、三角形つくったけど②できませんでした。理由は、オレンジ2本だとちょうど黄色になって、少し、えっと大きかったら、10cmより少し長かったら三角形はできるけど、できません。

D男:これ①できんの?

A子:理由言ってよ。

D男:言ったよ。離れてます。以上。

A子:これ②できない理由言いますね。オレンジ2本と10cmを比べると、ちょうどオレンジ2本の長さがぴったりで、これ③はオレンジと紫でも2cm足りないからできません。

 

最初、A子は①はできる、D男は②はできると考えていた。C男が、教具を曲げて③をつくりながら「曲がってしまう」「できない」と発言するのを聞き、A子は②に対して「ちょうどだよ(2辺の長さの和が残りの辺の長さに等しくなる)」と発言した。また、D男が「できません。オレンジのすみとすみが離れているから」と発言するのを聞いて、A子は、辺の長さに着目して②ができない理由を発言した。グループ交流の対話を通して、A子とD男は単に三角形がつくれるかつくれないかということから、どのようにすれば三角形をつくれるのかということを考え始めていることがわかる。

 その後の全体交流では①~③が三角形になったかどうか、そしてその理由を確認した。教師は、教具を引っ張って曲げる子どもの姿を示して共有することで、「三角形は3本の直線で囲まれた形なのに、今さっきのEさんのは人の手でつまんでいるし、つままないと戻ってしまうし、無理にやると直線じゃないので違うと思います」という言葉を引き出した。ここで初めて子どもから直線という数学的な言葉が使用された。さらに教師は「3本の直線で囲まれた形」という三角形の定義を確認して黒板で共有化した後「じゃあもう一度きくよ。どうしてこちら(①~③)はできないの?」と問いかけた。この問いかけは、最初の問いかけと同じように聞こえるかもしれない。しかし、ここからのグループ交流の対話の焦点は、辺は曲げてはならない、つまり辺は直線であることを前提として、なぜ三角形ができないときがあるかを考えるという問いに深まっていると言える。

3 辺の長さに着目して:届かないとき・同じになるとき

 先の4人組の2回目のグループ交流の対話も、辺は直線であることを前提として進んでいく。A子は①について「届かない」と発言しながら、また②については「ちょうどになる」と発言しながら、三角形がつくれないことを説明した。③についても、「オレンジの5cmと紫の7cmを足すと12cmで…。ちょうどだからできないんだと思います」と発言した。そうしている間にも、B子とC男とD男は、A子の説明に合わせて教具を操作して確かめていた。もう誰も教具を曲げて三角形をつくろうとはしない。この後、グループ交流の対話で発言が少なかったB子が、②について教具の操作をグループのみんなに見せながら、「同じ長さだから直線になる(2辺の長さの和が残りの辺の長さに等しくなる)」と、先のA子の説明と同様の説明をすることができた。

 その後の全体交流では、①について、辺の長さに着目して、つくれない理由が交流された。

Fさん:えっと、できない理由は、下の棒が上の棒より短かったり、同じだったりするとできない。

教師:棒っていうのは辺っていうことでいいかな?下の辺より上の辺が短い。どうだろう。つなげてください。(教師板書:下の辺より上の辺が短い)

Gさん :まずオレンジ2本と青1本①は、青が12cmでオレンジが2本あるから5cmが2つあって合わせたら10cm(教師板書:5cm+5cm=10cm)。オレンジは2つあって10cmでも下の青の12cmよりは長さが短いので届かないんだと思います。(教師板書:下12cmより短い)

 A子:①を2cm伸ばしたら、2cm伸ばしても、ここが2cm伸ばしてもちょうどになって、(①の提示用教具を直線のようにして2cm足らない部分を示しながら)広げてもオレンジ2本と黄色1本みたいにちょうどになってできないから、3cmとか4cm位伸ばしたらできると思う。

 教師:ぴったりだと、これみたいにできないのか。

 Hさん:えっとぴったりだと、こんなみたいに②なんかこの棒が痛い目に合うので(③の教具が曲がっている状態)、えっとこれをこんな長くしてここにくっつければ痛くならないと思うので(③の5cmを7cmに変えて(7,12,7)で三角形をつくる)、そうしたら、このつくる中で一番長い辺より、1cmとか大きかったら三角形がつくれると思います。(教師板書:一番長い辺より)

 教師は「一番長い辺より長い?その後が知りたい。何が長い?どういうこと?」と問いかけて、グループ交流での対話を促した。2回目のグループ交流を学級全体で共有する際に出てきた「辺の長さ」を3回目のグループ交流の対話の視点として設定したのである。

その後のグループ交流における対話では、A子は「10cm+5cmをして15cmで、15-12して3余って、1cmでも12cmより長かったら三角形ができると思います。」と発言し、D男は「こういうことやね、A子さんが言っとるの。」と言いながら(5,10,12)の三角形をつくって示した。

この3回目のグループ交流の対話を通して、A子は明確に一番長い辺と他の二辺の長さの和の関係について思考していたと考えられる。そして、D男もA子の示した3辺の組み合わせ方について、教具を用いて実際に三角形をつくることで、理解を深めようとしている姿が見られた。

三角形をつくる操作活動とグループ交流の対話を通して、子どもたちの中で何が起こっていたのであろうか。

4種類の長さの教具を自由に組み合わせて三角形をつくる活動を通して、「三角形をつくれない場合」があることに気づいた子どもたちは、最初はつくれるかつくれないかという操作に夢中になった。2時間目の最初、教具を曲げてでも三角形をつくろうとする子どもたちの姿から、その思いに変化はない。しかし、三角形の定義に照らして、教具が曲がっている状態は三角形とみなさない、つまり辺は直線であるという前提でグループ交流の対話を行うことで考えは一段深くなった。そしてさらに、辺の長さに着目し、2辺の長さの和と残りの1辺の長さとの関係に焦点をあててグループ交流の対話を行うことで、更に考えが深くなったと言える。

子どもたちは、最初から三角形の成立条件について明確な考えをもっていたわけではないだろうし、教具を用いてその考えを説明していったというわけでもない。むしろ、三角形がつくれない場合について、教具をあれこれと操作しながら、グループ交流の対話を3度行うことで、三角形の成立条件についての考えをもち、深めていったと言えるのではないだろうか。

参考文献

松島充・清水顕人(2020)小学3年「三角形」における三角形の成立条件の学習に関する研究:幾何ディスコースの発達の理論の立場から.数学教育学研究、26(2)、pp.45-57.