中3:式の展開と因数分解

中3:式の展開と因数分解

1 問題状況

 中学3年生のあるクラスの数学の授業で、十の位の数が同じで、一の位の数の和が10になる2桁の自然数どうしの2数の積について考えています(前時で十の位の数が1である2桁の自然数どうしの2数の積の効率的な計算方法について、なぜその計算方法で計算できるのかは学習を済ませています)。教師が、あっという間に計算して答えを書き込んでいきます。

Aさん:十の位が1じゃない。前回より難しそう…。

Bさん:でも十の位は同じ。一の位の数にも何か決まりがある?

Cさん:一の位の数の和が10だ。

Dさん:前回(1〇×1△)の応用なのかな。

Eさん:どういう仕組みで先生は計算してるんだろう?

何種類か計算式と答えを板書すると計算の仕組みに気づき始める生徒が出てきました。

Fさん:答えの下2桁は一の位の数どうしの積になってる。

Aさん:十の位の数どうしをかけてもう一回その数を足してる?

   (27×23だったら2×2+2=6)

Cさん:十の位の数とそれより1大きい数をかけてる!

   (27×23だったら2×(2+1)=6)

仕組みが見え始めてきたところで、「疑問に思うことは?」と教師が問いかけました。すると生徒からは次のような疑問が出てきました。どれから考えていきたいか生徒に問うと、「なぜこれができるの?」から考えたいということでした。そこで、本時の学習課題を「なぜこの方法で計算できるの?」に設定しました。

2 発達的ケア

 式の展開・因数分解の単元を学習するにあたり、単元の1時間目の授業から一貫して面積図を使って視覚的に考え、その過程を文字式で表現するという手立てを講じてきました。その理由は、数学を苦手とする生徒にも、面積図を用いて計算を視覚的に捉えることで、「自分でできた」という達成感を味わいながら本時の学習課題を解決してほしいからです。

第1時:単元の導入
第3時:展開の導入

 今回の学習課題の計算の仕組みを説明するために、生徒は何を用いて説明するでしょうか。右図のように、ロイロノートの提出箱を用いて、自分が何を用いて考えていくのかを表示することで、教師側が個別の生徒の考えを把握しやすくするとともに、生徒同士で聞き合うときに誰がどの考えで進めているのかが分かるようにしました。また、考えていく中で、手段が変わった場合は提出Boxへカードを送り直すようにしました。

生徒の選択した方法の一覧
3 子どもたちの学びの姿

 面積図を用いて具体的な数字の計算で考える生徒、文字式を用いて考える生徒、文字を使って面積図で考える生徒など、生徒は前時までの経験をもとに、自分のこだわりの方法で考え始めました。

Aさん:前回と同じように面積図を使うとわかりやすいな。

Bさん:文字式より、面積図の方がイメージしやすい。

Cさん:文字式は文字でおいて計算していくだけなので簡単にできるから楽しいな。

Dさん:面積図ではすぐに表せたけど、文字ではあまりうまく表せないな。

 文字式を用いて考えている生徒の中から「文字のおき方ってどうすればいいんだろう?」という問いが出てきました。そこで教師は「文字のおき方で困っている人がいるんだけど、どうしたらいいのかな?」と全体に問いかけました。

Eさん:十の位の数をとして、一の位の数をとする。

Fさん:えっ、一の位はだけでいいんじゃないの?条件に一の位の数の和が10というのがあるよ。

教師:最初におさえた条件がポイントになるんだね。

 Fさんは、文字2つを使って考えていたが、次のような疑問をもちました。

Fさん:文字2つで表して 100a2+100a+10bb2100a^2+100a+10b-b^2 まではできたんだけど、この あとどうすれば説明したいことになるのかな。

Eさん:私は文字3つで表したんだけど、100a2+10ac+10ab+bc100a^2+10ac+10ab+bc でとまってしまったよ。どうすればいいのかな。

Fさん:前回、共通因数でくくったから、とりあえずくくってみると、100a(a+1)+b(10b)100a(a+1)+b(10-b) になるよ。

Eさん:100a(a+1)100a(a+1) は言いたいことになってるんじゃない。私の方は、10a(10a+c+b)+bc10a(10a+c+b)+bc になるけど…。

Fさん:b+c=10b+c=10 を使えば、10a(10a+10)+bc=100a(a+1)+bc10a(10a+10)+bc=100a(a+1)+bc になるよ。

 この議論に前後して、面積図を用いた生徒と、文字式を用いた生徒の2名の考えを黒板にかいてもらいました。2人がかき終わったところで、黒板を見た生徒が「ここまでは僕も式変形できたけど、だから何なのか分からない」とつぶやきました。そこで教師は、面積図で考え終わって満足している生徒にも文字式で考えることを促すために、その生徒の問いを全体に伝えました。すると、面積図で考えていた生徒たちが文字式を用いて考えていた友達の声に耳を傾け始めました。

 学級全体で2つの考えを交流し始めました。まずは、面積図を用いた生徒による説明です。前時と同じように考えることができるので、生徒たちには理解がしやすかったようです。

 次に、文字式(文字3つ)を用いた生徒による説明です。展開する時に途中式を書いているため、どのように考えていったのかが分かりやすくなっています。その途中式を見てある生徒が「2段目の (b+c)(b+c) のところを10にすれば、すぐに一番下の式にたどりつけるのでは?」とつぶやきました。「一の位の数の和が10になるのが大切」と言っていた生徒Fさんです。Fさんは自分の意見を押し通すのではなく、「こうすればもっといいんじゃないかな。そのままの式でもいいけど。」というように相手の考えを認めたうえでアドバイスをしていました。