中1:おうぎ形の面積<平面図形>

中1:おうぎ形の面積<平面図形>

1 AIドリルを通して、求め方をマスターする(1時間目)

 中学校1年生「おうぎ形の計量」について2時間構成で行った。「おうぎ形の計量」では、小学校で学習した円の周の長さと面積の求め方を発展させ、同じ半径のおうぎ形の大きさは中心角の大きさに比例することを用いて、おうぎ形の弧の長さや面積を求めることを学習する。しかし、図を動的に動かす(おうぎ形の中心角を変化させる)と比例していることは見て取れるが、公式を見ると比例の式 y=axy=ax の形とかけ離れているので、子どもたちは比例の考え方と結びつけることは難しい。そこで、a/100a/100に着目し、割合(比)として考えることで意味理解もしやすいのではないかと考えた。

 1時間目は、教師が子どもたちに「この1時間でおうぎ形の弧の長さと面積を求めるようになりましょう」と伝えた(前時でおうぎ形の各部分の名称は学習している)。また学習の手段として「AIドリルにある動画をみてもいいこと、教科書をみてもいいこと、友だち同士で相談しながら行ってもいいこと、あとで振り返ることができるようにメモをとること、配信しているAIドリルの問題を解き終えること」を伝え、そして授業の最後10分で「テストします」と伝えると子どもたちは、一斉に学習を始めた。ここで、子どもたちの多様な学びの姿を見ることができた。

 ① 席を移動して、友だち同士で対話しながら行う子ども

 ② 席を移動せずに、近くの友だちと対話しながら行う子ども

 ③ 席を移動せず、1人で黙々と行う子ども

 ④ 動画を何回も最初に戻して、くり返し再生して考える子ども

 ⑤ 動画の一部分をくり返し再生して考える子ども

 ⑥ 動画は1回みて、教科書で考える子ども

 この①~⑥のさまざまな組み合わせで、子どもたちは活動していた。教師は机間指導とAIドリルの進捗確認(AIドリルの管理サイトを使用して)をすることに徹した。ほとんどの子どもたちはおうぎ形の公式「弧の長さ:l=2πr×a/360l=2πr×a/360 、面積:S=πr2×a/360S=πr^2×a/360」で求められることに気づき、AIドリルの問題を最後まで解くことができた。短い時間であったが下記のAIドリルのメリット(AIドリルの種類により仕組みは異なる)を活かすことができた。

<AIドリルのメリット>

 ・解いた問題を自動で採点してくれる

 ・生徒の到達具合をリアルタイムで確認できる

 ・繰り返し問題を解くことができる

 ・間違えた問題をすぐに評価してくれる

 そしてテストを行うと、ほとんどの生徒がおうぎ形の弧の長さや面積を計算することができていた。そのテストの中に、「なぜ、おうぎ形の求積公式(S=πr2×a/360S=πr^2×a/360)で面積を求めることができるのか、その理由を書きなさい」という問いを設けた。動画や教科書で比例を基に説明されていた内容であったが、説明できた子どもは数人であった。つまり、AIドリルでは扇形の面積を計算で求めることができるようになるが、なぜ?と言う部分にはたどり着かなった。

2 a/360a/360 の意味を考えよう(2時間目)

 2時間目は、まず前時の復習として半径5cmで中心角が①180°、②90°、③45°のおうぎ形の面積を求める活動を設定し、おうぎ形の求積公式を確認した。また表1のワークシートを配布し、右列に円を加えることで、次のグループワークでの気づきにするための手立てとした。

表1 中心角とa/360の関係の表

中心角    
a/100a/100    

 このとき、ほとんどの生徒がおうぎ形の計量の仕方について、納得している様子を見ることができた。ここで教師が、「そもそも、おうぎ形の公式でなんで求められるの?」と問いかけると、子どもたちが「??」となった。少し絞って、「円の公式との違いは?」と問いかけると、子どもたちは「S=πr2×a/360S=πr^2×a/360」と口々に言った。そして教員は、「では、a/100a/100 って何?」と聞くと、子どもたちは改めて「??」となった。ここで、教師が本時の学習目標「a/100a/100  の意味を考えよう」を提示した。まずは子どもたgち一人ひとりで「a/100a/100 の意味」について考えたあと、グループワークを行った。その中の1つの班(4人班)の様子が下記の発話記録である(C1~4が生徒、Tが教師)。

C2 360、360が円で。

C3 そやな。

C2 円の中の、何か不思議や(?)。わからん。

C3 360分のa。

C1 表に書こう、ちょっと。2、4、…。

C4 ここも1じゃないん?

C3 1?

C2 1。

C3 1が?

C4 1って何?

C3 全部。

C2 全部で1、全部で1。

 表を基に考えた結果、360/360のときに1になることに気づき、この1がなんのか疑問に持ち始めたため、教師が「全部で1ってどいうこと?」と班に問いかけた。

C3 比例定数が360とか?

C2 ああ。

C4 比例の話なん?

C3 え、わからん。

C2 比例しとる気がする。あれやろ何やっけ。

T  比例なの?

C1 比例ちゃう?

C4 比例できん。360度で止まるから。

C3 じゃあ、反比例じゃない?

C4 反比例?減っていくん?どんどん。

「おうぎ形の計量」は図形領域であるが、「比例」や「反比例」といった関数領域につなげて子どもたちは対話をしている。これまでの数学的な知識の活用がみられた場面である。しかし、話が少しずれてきたので、軌道修正するために教師が改めて、「1って何?」と問いかけた。

C2 全部。

C3 1?

T  何かのときよく1って使うよね。

C2 え、割合?

C3 そうや、それや。

C1 じゃあ、分数って割合。

C1 これがじゃあ2分の1ってことは…

C1 200、いや、50%。

C4 だから、割合です。

C3 そうや、割合や。ほんまや。

 教師の「何かのときよく1って使うよね」という発問により、一気に「割合」へと子どもたちは帰着した。そして、4人の子どもたちが、しっかりと話し合いに参加している様子が伺える。この4人全員は数学が得意というわけではない。前時の①~⑥の自分に適した学び方の経験、表から見えてくること、既習の数学的知識、教師の声かけを参考にしながら、課題を解決しようとしていた。各班が話し合いの結果をまとめた図2を示す。

図2 各班のまとめ(一部抜粋)

 図2のように、各班が割合やそれに近い表現まとめることができていた(他の班では「円全体の何個分」、「円を1とした時の割合」、「おうぎ形が円にどれだけ含まれるか」、「円を何等分しているのか」といった表現だった)。そしてどの班も、話し合いの中で求め方に言及することはほとんどなかった。

3 話すことができるから考えを深化させられる子どもたち

 2で前述したように、班員全員が数学を得意としているわけでないが、話し合いに積極的に参加している様子がみられた。これは、前時のAIドリルによる計算練習により、単なる計算の手続きに焦点化した話ではなく、おうぎ形の求積公式本質に焦点化された議論の実現が要因であるといえる。数学を使って対話していく上で、どうしても「わからない」から話せない子どもたちが出てきてしまう。そのために、子どもたちが話し合えるための材料や土台をそろえる必要がある。子どもたちが話し合いに参加できる状況をつくるための1つの手立てとしてAIドリルの活用が有効であると考える。限られた時間の中で、繰り返し学習することができるためである。またAIドリルだけでなく、教科書や解説動画など様々な教材を子どもたちの中で駆使して、主体的に学べる環境も必要である。その結果として、対話の土台がそろい、話し合いの場で班員全員が話すことのできる深い学びにつながった。すべての子どもが対話に参加できるようにするために、子どもたちが自分のわかり方に沿った学びの方法を自由に選択できる場の設定が教師に求められている。

参考文献

松島充・市川隆介・矢野利幸(2024)AI 型ドリルによる数学学習の限界と数学教師の専門性、日本科学教育学会年会論文集、48、pp.513-516.